SysML2019 参加報告

2019年4月1日から2日間、国際会議SysML2019が開催された。
私はこの会議に参加したのだが、語弊を恐れずに言えば非常に「楽しい」会議だったので、ぜひ本記事で紹介してみたい。なお、より詳細な内容の記事は『コンピュータソフトウェア』に寄稿予定である。

この会議は今年で2回めとなる新しい国際会議であり、計算機システム(System)と機械学習(ML、Machine
Learning)という2つの研究トピックの学際領域における研究発表を行うという趣旨のもので、機械学習を実用するためのソフトウェア・ハードウェア全般が対象となる。

本年の参加者は515名で、第1回である昨年の292名から1.8倍程度に増加している。それ以前はNIPS(現NeurIPS)等機械学習分野の会議の併設ワークショップとして数度開催されていたが、聞くところによればその頃の参加者は50名程度だそうで、数年で実質10倍の規模になった。

その中での産学の内訳は、企業から68%、大学から29%とのことだった。主だった参加者の所属としては、企業はFacebook、Google、Amazon、Intel、Microsoftなど、大学はスタンフォード大、CMU、カリフォルニア大学バークレー校、ETHなど、とのこと。

プログラムに関しても、昨年は招待講演が大半を占める1日のみの開催で開催実績だけが先行したイメージだったが、本年に関してはシングルトラックながら2日間に渡って質の高い発表があり、また採択率も16.9%と、立派な国際会議に成長した印象を受けた。プログラムの構成は、先述の通りシングルトラックで、基調講演2件、研究論文発表4セッション32件、ポスター・デモ発表が15件であった(さらに口頭発表した研究もポスターに同時掲載していた)。

なお、会議の様子は当日Youtube Liveにてライブ配信され、現在もYoutube上でアーカイブを観ることができる((1日目
https://youtu.be/7CkV6jEDwlY、2日目 https://youtu.be/uRfp-reEJQ0))。

各発表の詳細は『コンピュータソフトウェア』寄稿の記事に取り置くとして、この会議に参加して強く感じたのは『機械学習のための〇〇』といった研究が今強く求められているということである。この数年で機械学習・深層学習が急速な発展と社会への普及を遂げるにつれ、大きく成長した機械学習を既存の情報科学の中でどう位置づけるべきか、あるいは逆に機械学習の社会実装のために既存の情報科学をどう用いるべきか、が今社会から問われていて、この会議はそうした社会からの強い要求に基づいて登場したものなのだ。参加してみてその熱量の大きさに私は強く感銘を受けた。

おそらく日本においても、分散・並列計算、システムアーキテクチャ、LSI設計、プログラミング言語、ソフトウェア工学といった諸分野において機械学習・深層学習への応用を踏まえた研究を進めている諸氏は多いはずだが、ぜひ「機械学習のための」諸分野の研究が集うこの会議への参加を検討してみてはいかがだろうか。機械学習分野とシステム分野それぞれの見地から同時に良い示唆が得られるのではと思われる。

なお、次回SysML2010は開催だけは決まっているが詳細は未定である。今年と同じスケジュールで開催されるとするなら、論文投稿締切は9月頃になろうかと思われる。

また、国内では機械学習工学研究会(MLSE)でもこの会議とほぼ同様のトピックを扱っているので、こちらへの参加もぜひ検討してみてほしい。

報告者: 今井