プロジェクトの目的
機械学習を組み込んだソフトウェア・システムの品質を担保するための機械学習工学を確立しその普及を目指します。
最終的に本格研究期間を通じて、従来よりも 50% 以上の高信頼性を担保でき、かつ 30% 以上の安定度で価値が創造できる機械学習応用システムの開発技術を創出し、創出技術を用いたパイロットプロジェクトにより普及の実現可能性を確認します。さらに、技術の普及・発展のための体制を整えます。

プロジェクトの目的
近年、IoT の普及と計算機の高速化により、いわゆるビックデータと言われる大量データからルールや知識を自動的に獲得する機械学習をソフトウェア・システムに組み込むことが一般化しつつあります。しかしながら、機械学習で得たシステムの振る舞いは、確率・統計的でかつ、訓練に用いるデータの数や性質に依存するため、システムとして必要な精度等の品質を実現できるのか、その品質をどれくらいの工数で実現できるかの予測が非常に難しい。そのため、従来のシステム開発のための工学的アプローチが適用できず、システムの価値創造と信頼性の担保が困難であり、社会のニーズに答えることができません。さらに、自動運転を始めとする、不特定多数がアクセスできる場からデータを取得し、機械学習を使った判断を行う場合、意図的に誤判断を起こすように、入力データを敵対的なデータに書き換えることも考えられます。そのため、同時期に多くのシステムを誤判断させるセキュリティ障害など,従来と異なるリスクが存在します。すなわち、機械学習を応用したシステムに関する工学の確立が e-Society 実現のためには急務となります。
機械学習は、データから振る舞いを統計的理論に基づき自動的に導出する帰納的パラダイムによりソフトウェアを構成します。これは、従来のアルゴリズムや規則による演繹的パラダイムを前提とした要求分析、信頼性担保のための技術を直接的に適用することはできません。また、機械学習分野では、出力の説明可能性や安定性、変更容易性など、一部品質にかかわる研究がアルゴリズム観点からなされていますが、特定の状況や事例に限定された報告があるのみで、工学的な枠組みとして整備され実用的に信頼性が担保できる技術には至っていません。本研究は、この技術の確立を目指し、以下の 3 つの観点で学術的に挑戦的な研究開発となります。
- 演繹的パラダイムと帰納的パラダイムのパラダイム融合
- 決定的モデルと確率・統計的モデルの融合
- 機械学習の訓練・推論サイクルとシステムのライフサイクルの融合
また機械学習応用システムを工学的な枠組みで整理する考え方は、一部の研究者たちがその必要性を謳っているが、組織的な枠組みは世界的にもまだ始まったばかりであり、独創性が高い。
本研究の成果は、直接的に機械学習応用システムの普及・発展を促進し、機械学習を応用するあらゆる産業の発展に寄与することになります。特に、医療・ヘルスケア、自動運転など、日本が強みを発揮できる分野においては、そのシステムの信頼性の担保や価値の想像が本質的です。特に、日本企業においては、信頼性を担保する仕組みやそのガイドラインの役割が大きく、これらの技術開発の遅れが、機械学習応用システムの導入の遅れにつながることになりかねません。また、総務省の平成 29 年度の白書では、IoT・AI の経済成長へのインパクトは、2030 年までに 1,224 兆円から 1,495 兆円となっており、機械学習応用システムの生産性の向上と価値創造により価値が 30% 向上すれば、それ以上の経済成長が成し遂げられます。

プロジェクトメンバー
2019年1月のプロジェクトキックオフ時

2019年度プロジェクトキックオフ時(2019年4月)

株式会社 Udzuki
株式会社ウェザーニュース
株式会社ウルフ
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
NTT テクノクロス株式会社
グリー株式会社
株式会社富士通研究所
株式会社 Preferred Networks
株式会社デンソー
日本電気株式会社
株式会社日立製作所
ライフマティックス株式会社
有人宇宙システム株式会社(JAMSS)
国立情報学研究所
九州大学
東京電機大学
日本工業大学
北陸先端科学技術大学院大学
早稲田大学